堀江研究室Horie Lab
スタッフ
堀江朋子 准教授
オートファジーがつなぐ、分解と代謝の世界
堀江研究室では、オートファジーを中心に、生体分子の分解機構の解明に取り組んでいます。オートファジーは、細胞内の恒常性を維持するうえで欠かせない分解経路です。 栄養飢餓やストレス応答時に強く誘導される一方、平常時にも常に作動し、細胞の健全性を保つ品質管理システムとしても機能しています。オートファジー経路が破綻すると、 神経変性疾患、がん、代謝異常、感染症、老化など、さまざまな疾患の発症につながることが知られています。(図1)

オートファジーによる分解は、液胞(酵母)やリソソーム(動物細胞)で行われます。私たちは、モデル生物として出芽酵母(Saccharomyces cerevisiae)を用いた研究を行っています。
酵母は遺伝学的操作が容易で、これまでに多くのオートファジー関連因子の発見にも寄与しており、その基本原理を明らかにする上で優れたモデル系です。
私たちは、酵母から高純度に単離した液胞を用いて、in vitroでの分解活性の測定や分解酵素・分解産物の同定を進めています。これにより、タンパク質のみならず、
RNA、脂質、糖、イオン、代謝物といった多様な生体分子の分解・再利用のメカニズムを理解しようとしています。さらに、分解によって生じた産物が、どのように代謝経路に組み込まれ、
細胞内で再利用・輸送されていくのかという、「オートファジーの“その先”」にある動的なプロセスにも注目しています(図2)。こうした研究を通じて、私たちは最終的に、
生体分子の分解・代謝・輸送のアトラスを描き出し、細胞内でオートファジーが果たす役割を代謝の視点から包括的に理解することを目指しており、将来的には、得られた知見を
動物細胞系にも広げていきたいと考えています。

代表的論文
- Kagohashi Y, Sasaki M, May AI, Kawamata T, Ohsumi Y. The mechanism of Atg15-mediated membrane disruption in autophagy.. J Cell Biol. 2023, Dec 4;222(12):e202306120.
- Kawamata T, Makino S, Kagohashi Y, Sasaki M, Ohsumi Y. A method for the isolation and characterization of autophagic bodies from yeast provides a key tool to investigate cargos of autophagy. J Biol Chem. 2022 Dec;298(12):102641.
- Huang H, Kawamata T, Horie T, Tsugawa H, Nakayama Y, Ohsumi Y, Fukusaki E. Bulk RNA degradation by nitrogen starvation-induced autophagy in yeast. EMBO J. 2015 Jan 13;34(2):154-68.